皆さんは バウンダリー(boundary)という言葉を聞いたことがありますか?
パウンダリーは境界のことを指しますが、ここでは心理学的に言われている「心の境界」についてご紹介します。
土地には、所有者の異なる隣接した敷地を分ける隣地境界線というラインがあります。
目印の杭を打ち「ここまでがあなたの所有物で、この先は他人の所有物である」ということを明確に示しています。
それと同じように、人にも「私は私、あなたはあなた」という心理的な境界線があります。
それが「バウンダリー」です。
バウンダリーも家や土地と同じように、他人が勝手に侵入して良いものではありません。
しかし、はっきりとした目印はなく、人によって境界線の距離も異なるため、知らず知らずの内に境界侵入が起きていることがあります。
バウンダリーの分類
心理学におけるバウンダリーには、いくつかの分類があります。
物理的バウンダリー
身体的に触れること、空間、個人の財産に対する境界線を「物理的バウンダリー」と呼びます。
他人が触れることを許可する範囲、空間的な距離、自分の部屋や物を他人が使用することを許可する範囲などが該当します。
感情的バウンダリー
自分と他人の感情を区別する境界線を「感情的バウンダリー」と呼びます。
自分の感情は自己責任であると理解し相手のせいにしない。また、他人の感情に対しても関与したり自分が背負ったりしない。という境界です。
心理的バウンダリー
自分の思考や意見を尊重し、他人の思考や意見に対する尊重を保つという境界線を「心理的バウンダリー」と呼びます。
自分の意見を強要せず、他人に自分の意見を強要されないという境界です。
時間的バウンダリー
自分に使う時間と、他人に使う時間の境界線を「時間的バウンダリー」と呼びます。
健全な時間的バウンダリーを設けることで、自分の時間を効果的に管理し、ストレスを軽減することができます。
バウンダリー侵害の例
あなたのためを思って
といって意見を押し付けるのはバウンダリーの侵害です。
子供やパートナー、友人など身近な人に対して起こりやすい侵害ですが、悪い影響を与えていると思う趣味趣向や対人関係、将来の決断に口を挟む場合に該当します。
自分の意見として助言する程度であれば良いですが、何度も干渉する場合、意見の押し付けになります。何を選ぶかは本人の自由です。
自分が誰かに「こうして欲しい」と思う場合「あなたのため」ではなく、本当は自分のための要望かも知れません。
この言葉をかけられて違和感を感じた場合、自分の境界線に相手が侵入してきたことを指します。
こっちにしなよ
そんなものが欲しいの?と、相手の趣味や好みを否定するのも、自分の価値観を押し付けようとするコントロールの心理が働いています。
またこの場合、相手が自分の提案とは異なる選択をして失敗した際に「私の言う通りにしておけば…」という言葉で自分が正しかったと主張し、さらに相手をコントロール下に置こうとします。
このくらい良いでしょ
相手の意思を無視し、自分の感覚だけで相手に触れたり、相手のプライベートな物を使ったり、プライベートな空間に入ったりするのもバウンダリーの侵害です。
これも、ある程度近しい間柄の人とで起こりやすい侵害ですが、初対面でも驚くほどに距離の近い人がいます。
「親しき中にも礼儀あり」ということわざがありますが、どんな間柄でも自分と相手の感覚は異なるため、相手に確認したり、反応を見て折り合いをつけることが必要です。
また、嫌な場合はしっかりとその気持ちを相手に伝えましょう。
予定などを勝手に決める
相手の予定を勝手に決めてしまうこともバウンダリーの侵害です。
「この日は私と出かけるの!」「あなたはこれをしておけば良い|」など相手の予定や行動を勝手に決めてしまうのは、心理的バウンダリーの他、時間的なバウンダリーの侵害に該当します。
誘いを断られた時に、おもむろに不機嫌な態度をとることも、パウンダリーの侵害になります。
相手には相手の都合があり、その基準が自分と異なるからといって責められることではありません。
健全なバウンダリー
バウンダリーは、健全な人間関係を維持し、自分自身を守るために重要なものです。
特に、他人の要求が自分の価値観と合わない場合や食い違いがある場合に、しっかりとした境界が必要です。
健全なバウンダリーを持つ人は、自分の感情や言動に対して責任を持ち、他人の感情や言動を尊重します。
「私は私、あなたはあなた」というラインがあるため、自分と他人の要求をバランス良く考え、良好な人間関係を築くことができます。
不健全なバウンダリー
不健全なバウンダリーを持つ人は、他人の感情や言動に過度に関与したり、自分の要求だけを重視します。
また逆に、自分の感情や要求を無視し、他人からの要求を優先する場合もあります。
何れの場合も「私は私、あなたはあなた」という自他の境界を飛び越えて、相手側に侵入していたり、自分側への侵入を許してしまっています。
これでは人間関係が辛く苦しいものとなり、心の安全が保たれません。
バウンダリーのタイプ
カウンセラーのニーナ・ブラウンは、下記4種類のバウンダリーを提唱しています。
柔らかい境界
柔らかい境界線を持つ人は、自分と他人との境界線が重なっており、他人からの境界侵入を受けやすいでしょう。
心理的コントロールの犠牲者になりやすいため、注意が必要です。
スポンジ状境界
スポンジ状の境界線を持つ人は、時には柔らかく時には硬い境界であると言えます。
柔らかい人よりも感情的伝染を受けることは少ないのですが、硬い人よりは影響を受けやすい状態です。
スポンジ状境界の人たちは、何を受入れ、何を受入れないかははっきりとしていないようです。
固い境界
硬い境界線を持つ人は、閉鎖されるか壁で囲われている状態であり、身体的・感情的に他人が近づくことは難しいでしょう。
物理的、感情的、心理的、性的に虐待を受けていた場合に固い境界となる傾向があります。
過去の辛い経験と同じような状況に遭遇した場合には、時間、場所、状況に依存する「選択的な硬い境界線」も起こり得ます。
フレキシブル境界
フレキシブルな境界線を持つ人は、何を受け入れ、何を受け入れないかをハッキリと決めています。
感情的伝染や心理的コントロールによく抵抗し、他者がこの境界を破ることは困難でしょう。
「選択的な硬い境界線」とも似ていますが、それよりも良くコントロールされています。
バウンダリーは一定ではない
私たちにとって境界線の固さや強さは一定ではなく、相手に応じて強くなったり弱くなったり、心理状態によっても異なります。
断っても踏み込んでくる人、勝手に決めつけたり意見をきいてくれない人に対して、私たちはバウンダリーを強固にし、しっかり距離を取ることで自分を守ります。
逆に安心できる相手と一緒なら、私たちのバウンダリーはやわらかなものになります。
強固な境界を引かなくても自分が守られている、尊重されている、といった安心があるからです。
もし、相手が自分とは距離をとりたがる場合、相手のパウンダリーは自分より固く、自分が相手のバウンダリーを侵害している可能性があります。
相手の問題を自分の問題として捉えたり、自分の問題を相手にすり替えて干渉しすぎていないか、振り返ってみると良いでしょう。
バウンダリーの必要性
私たちが互いに傷付け合わないためにバウンダリー(心の境界線)が存在します。
特に親子やパートナーとの間でバウンダリーが曖昧になり易く、子供の将来を親が決めてしまったり、パートナーの趣味趣向に口を出しコントロールしてしまいがちです。
その結果、子供が大きくなってから親と疎遠になったり、親の恐怖を感じなくなった途端に反抗するといったことが起こります。
パートナー同士でも、相手が急に離れていったり、離婚するといったことが起こります。
以前の私は柔らかい境界線を持っており、他者に依存しがちで相手からの境界侵入もよく受けていました。
そして次第に、自分の気持ちもよく分からなくなってしまいました。
きちんと境界を引いていなかったために、そのような心境になったのだと思います。
現在はだいぶ健全なバウンダリーを持てるようになり、他人から侵入されることも無くなりました。
心にも自他の境界があることを認識し、自分の境界を守り、相手の境界線も大切にすることはとても重要なことです。
良い人間関係を築いて幸せに過ごすためには、欠かせないことなのだと実感しています。
最期まで読んで頂き、ありがとうござます。
心の距離をどう保つか、ぜひご自身の心と相談し、健全な境界線を引いているかを考えてみて下さいね🍀
~Shiho~